第17章 揺るぎない想いと誓い
「エルヴィンから聞いたとは思うが…、俺は No Nameでボーカルをやっている」
「……はい…」
「この秋は、次のアルバムの曲作りで自由に時間を使えたが、ツアーが始まるとそうもいかねぇ」
「……はい…」
「No Nameは覆面バンドだから、この先 不自由なことも多いかもしれねぇ」
「……はい…」
着々と これからもう会えない理由を語るリヴァイの低い声に、マヤは耳を覆いたくなったが、辛うじて耐えていた。
しかし耳を覆う自身の行動は 意志の力で阻止できても、小刻みに震える身体の不随意な動きは どう足掻いても止められない。
リヴァイからの拒絶の言葉を毅然と受け止める覚悟でいるのに、先ほどから無様に震えている自分が情けなくて仕方がない。
マヤは折角泣きやんだのに、またじんわりと涙腺が緩むのを感じた。
「お前くらいの年の女が経験するような普通の幸せを、俺は与えてやれないかもしれねぇ」
「………?」
「……それでも… 俺のそばにいてくれねぇか?」
「……は…い?」
リヴァイの言葉の真意が掴めず、マヤはぽかんと口を開けたまま、リヴァイの顔をまじまじと見つめた。
「……あ、あの… それはどういう…?」
マヤの戸惑った様子に、リヴァイは眉間に皺を深く寄せ、吐き捨てるように言う。
「どういうもクソもねぇだろ」
「……はい?」
「俺のそばにいろって言ってんだろうが」
「えええっ?」
「……おい…。そんなに嫌なのかよ…」
「ち、ちが! そうじゃなくって、えっと あの私、振られるんじゃないんですか?」
「あ? 何を言ってんだ」
「だって私、てっきりリヴァイさんがNo Nameだし、もう会えないって言うのかと…」
マヤの今にも泣き出しそうな顔を見ながら、リヴァイは はぁっとため息をついた。
「マヤ、よく聞け。……俺は お前のことが好きだ」
マヤが思わずリヴァイの顔を見上げると、その深い夜の色をした瞳は、ゆらゆらと切なそうに揺れていた。