第17章 揺るぎない想いと誓い
……リヴァイさんは、ホストじゃなかった。
……No Nameだった…。
でも、どうして?
ホストですら住む世界が違うと思い、何故 毎日会いに来てくれるのか不思議なくらいだったのに…。
あんな有名なNo Nameだなんて、ますます遠い世界の人だ。
マヤが色々と思いを巡らせていると、スミス社長の声が聞こえてきた。
「騙すつもりはなかったのだが、結局は こんな形になってしまって申し訳ない」
「……いえ…」
「No Nameは 素性を明かせない特殊なユニットだからね。あのとき君の捜したい “ホストの彼” がリヴァイだと判っても、おいそれと真実を告げる訳にはいかなかったんだ」
「……はい…」
「でもあのとき、君を助けたいと思った気持ちに嘘はない」
「………」
マヤはしばらくうつむいていたが、意を決したようにエルヴィンを見つめた。
「スミスさん…、今日は どうして私を呼んだんですか? 素性を明かせないんでしょう? どうして…」
訊きながらマヤは、涙がこみ上げてきた。
……きっとスミスさんは、リヴァイさんがあのNo Nameだから、今後 君に関わることはない、綺麗サッパリ忘れてくれ… と言いたいんだ…。
そのために今日、私はここに呼ばれた。
もう二度と…、リヴァイさんには逢えないんだ。
泣いちゃいけない…。
スミスさんを困らせてはいけない…。
マヤは泣くのをこらえて、その場に崩れ落ちてしまわないように必死で立っていた。
「風丘さん、今日 君をここに呼んだ理由は、リヴァイから聞くといい」
「……え?」
「リヴァイは屋上で君を待っている。来たまえ」
エルヴィンはそう言うと、社長室を出た。
訳がわからず、マヤがそのあとをついていくと、廊下の端の屋上に通じるドアの前まで来た。
エルヴィンはそのドアを開けると、マヤに優しく笑いかけた。
「リヴァイはこの上にいるよ。さぁ 行くんだ」
そしてその大きな手でマヤの背を、そっと押した。