第17章 揺るぎない想いと誓い
部屋の中に入ると、マヤの背後で重そうなドアがバタンと音を立てて閉まった。
マヤの正面には大きなマホガニーのデスクが、存在感を放っている。
革張りのソファセットも ゆったりと配置されてあり、壁際には大きな本棚と飾り棚もある。かなり広い部屋だ。
窓際に一人の男が、こちらに背を向けて立っていた。
……あの人が 社長さん?
マヤは部屋に入ったもののどうしていいかわからず、不安そうに立っていた。
「急に呼び立てて、済まなかったね」
深みのある声で謝りながら 振り返ったその人は…。
「……ス、スミスさん!?」
マヤは、目の前で穏やかに笑っているエルヴィン・スミスの姿に、我が目を疑った。
「やぁ お嬢さん。驚かせてしまったかな?」
「……ど…、どういう…こと…です…か…?」
マヤは声が震えるのを抑えられなかった。
「スミ…スさんが…、リヴァ…イさんや…ハン…ジさんの…社長…?」
「そうだ」
「……ホスト…クラブ…の? でも スミスさんは、スミスプロモーションの社長さん…ですよね…?」
「そうだ」
混乱しているマヤに、エルヴィンは静かに話し始めた。
「風丘さん、君が何故 リヴァイをホストと勘違いしているか定かではないが…」
「……勘違い?」
「全くそのとおりだ」
「リヴァイさんは …ホストじゃないんですか…?」
エルヴィンはマホガニーのデスクの上に置いてあったものを手に取り、それをマヤに差し出した。
「リヴァイは…、No Nameだ。これは 次のアルバムの仮のジャケ写だ」
マヤは、渡されたジャケ写に目を落とした。
目元を包帯で巻いたNo Nameのボーカルが、スタンドマイクを斜めに持ち 切なげに歌っている。
……サラサラの黒い髪… この耳の形… この薄いくちびる… あごのライン…。
「……あぁ… 嘘…でしょう…」
マヤの声は震えている。
「君なら…、これが誰だかわかるだろう?」
マヤにはエルヴィン・スミスの声が、遠い所で聞こえる気がする。
……白く美しい首すじ… 骨ばった長い指…。
忘れるはずがない。見間違う訳がない。
……リヴァイさんだ…!
マヤはその写真を持つ指に、ぎゅっと力をこめた。