第16章 眠らない街
いつもミケと飲みに行く酒場は、ホテルを出て しばらく夜風に当たりながら歩いたところにある小さな店だ。
店内に入ると、俺たちが好んで腰を落ち着ける角の席には もう先客がいた。
……チッ。
さて どこに座ろうかと思っていたところ、ミケにぐいっと袖を引っ張られた。
ミケが向かった席には金髪とブルネットの女が二人、俺たちを手招いていた。
ミケは俺の意見など聞かずに、勝手にそいつらの向かいに座った。
仕方なく、俺も座る。
金髪はジョアンナ、ブルネットはリジーで、近くの店で働いているダンサーらしい。
ダンサーというだけあって、二人とも抜群のプロポーションだ。
ミケは、すっかり鼻の下を伸ばしてやがる。
俺たちのことも聞かれたが、カジノ目当てで滞在している観光客だと お茶を濁した。
女たちが、どうでもいいくだらねぇ話を大袈裟なジェスチャーとともに繰り返す。
俺は黙って、デュワーズのハイボールのグラスを重ねた。
……こんなことなら一人で部屋で飲む方がマシだったな…。
そう思っていたら、ミケが耳元に口を寄せた。
「リヴァイ、いつまでも未練がましく悩むな。女でも抱いて とっとと忘れろ。どうせ溜まってんだろ」
俺が睨みつけると、
「俺はリジーにいく。お前はジョアンナだ」
と、勝手に金髪を押しつけやがった。
すっかりミケにしな垂れかかっているリジーを連れて部屋に戻ると言うので、俺は一番ヤツに効くであろう言葉をささやいた。
「おい、ナナバに言いつけるぞ」
するとミケは、
「あいつは今頃、ゲルガーと飲んでるさ」
と、意に介さない。
そして本当にリジーの腰に手をまわして、店を出ていった。
……オイオイオイオイ 待て待て。
マジかよ。ナンパするなら一人でやれ、俺を巻きこむな。
俺は席に残されたジョアンナの方へ、初めてまともに目をやった。
ブロンドの髪は緩やかなウェーブで肩より少し長い。
俺を値踏みするように見る瞳は、澄んだ青色で大きい。
彼女は髪をかき上げながら、俺の隣に移ってきた。
「リヴァイ、あたしも… あんたの部屋に行きたい」