第2章 屋上
うーん…、頭がズキズキする。
ここはどこだろう? なんだか身体のあちこちが痛い。
……もうちょっと寝させて、もうちょっと…。
マヤは、ゆるゆると微睡んでいた。
「おい」
……何?
「おい」
……誰?
「おい、お前。起きろ!」
「はい!?」
ガバッと起き上がると、ものすごく怖い顔をした男が私を見下ろしていた。
サラサラの黒い髪が、三白眼に半分くらいかかっている。
肌は月夜に、白く怪しく光っていた。
男は全身から、威圧的なオーラを発散していた。
何がなんだかわからないが、恐ろしい。
とにかく今この目の前にいる人は、私に怒っているみたいだ。
私は、この人の親でも殺したのだろうか。
そんな突拍子もないことが浮かぶほどの威力があった。
……いや私の方が、この人の射抜くような視線で殺されそうだ。
「こんな所で何をしている」
寝起きで混乱している上に、恐ろしく不機嫌そうな男に凄まれ、マヤは軽いパニックにおちいる。
え? え? 私、なんでここにいるんだっけ?
あ!そうだ、LIVE会場から抜け出したんだ。
「あ、あの、ごめんなさい。友達とNo NameのLIVEに来てたんですけど、途中で抜け出して…」
そこまで言うとマヤは、ふっと今、目の前にいる男の様子に気づいて固まってしまった。
男は白いシャツを肩から羽織っただけだった。
見事な胸板、割れた腹筋…。こんなにも美しい半裸を見たことがない。
マヤは、男の彫刻のような筋肉から目が離せなかった。