第16章 眠らない街
楽屋で、あと15分で始まるステージに集中しトリップしていた俺の意識は、ハンジのけたたましい声によって無理やり引き戻された。
「リヴァイ! ねぇ リヴァイってば!」
「……っせーな!」
「すごいの見つけたんだ!」
「……あとにしねぇか。お前はLIVEに対して、もっと真摯な態度で臨め。少しはミケを見習え」
俺は楽屋に入ってからずっと 神妙な面持ちでタブレットを見て瞑想しているミケの方を、あごでしゃくりながら言った。
「リヴァイ、ミケのあれはムッツリだよ!」
「あ?」
「エッチでいけない大人の世界のサイトで、エロフェロモン充電してるだけだから!」
「あぁ?」
俺がミケを睨みつけたら、ばつが悪そうにタブレットをオフにして楽屋から出ていきやがった。
……ったく、どいつもこいつも!
「で、リヴァイ~! これ見てよ!」
ハンジが目の前に差し出したスマホには、なんだか黒っぽい鳥のようなものが写っていた。
「なんだ、それは」
「ハシビロコウ! 青みを帯びた灰色の羽の大型の鳥で、体長は150センチになるものもいるんだって! ほらリヴァイと同じくらいじゃん」
……俺は160だ、クソメガネ!
内心で悪態をつく俺を横目で見ながら、さらに熱弁をふるうハンジ。
「ハシビロコウの性格は攻撃的で、単独生活を好むんだって。それにこの目つきの悪さ! 一目見た瞬間にリヴァイにソックリだと思ったよ!」
……こいつは最近、いっつもコレだ。
俺にソックリの珍獣を見つけた!と 大騒ぎしやがる。
最初は黒くて小さいコウモリだったり、アカクロノスリという鷹だったり。
タスマニアデビルが似ていると言い出したときは、その黒ちびっこい見かけに加えて、あごの力が強く、体の大きさと咬む力の強さの比率でいえば哺乳類で最強だというところが似ているらしい。
つい先週はビントロングとかいう、これまた黒い熊みたいな猫みたいなヤツだった。
大体 黒くて小さいか、凶暴で群れを好まないか、そういったヤツばかり俺に似ていると言ってきやがる。
……今度は、愛想の悪そうな鳥かよ。