第15章 氷月
エミと恵子の二人と別れたあと、マヤは駅のホームで電車を待ちながら思いを巡らせていた。
……私、笑えた。
もう二度と笑えないと思っていた。
私の世界は終わっただなんて、考えたりして。
なんだ…。
なんてことはない。
……全然、大したことではなかったんだ。リヴァイさんが消えてしまったことは。
落ち着いて考えてみたら、最初から何も未来を望まない恋だったではないか。
……いつリヴァイさんが暇つぶしに飽きて会えなくなるかわからないけど、そのときまで想いを募らせよう。
そう心の底から、思っていたのに。
私は とっても悪い子だ。
“今だけでいい”…。会えなくなるまで… その瞬間まで…、想っていよう。それだけでいい。
そんな風に思いながら、会えなくなったあとも想いを募らせてしまった。“今だけ” でなく、この先ずっと想っていたいと欲張ってしまった。
でも、もう気持ちに区切りをつけないと。
そうだ。リヴァイさんを捜して、お礼を言おう。
“短い間でしたけど、一緒にいられて楽しかったです。ありがとうございました”
そう言おう。
きっと そう言えることができれば、終幕できる。
今のまま… 有耶無耶なままじゃ、いつまでもうじうじ思い迷う沼から抜け出せそうにない。
マヤはホームに入ってきた電車には乗らずに、反対側のホームに向かった。
……リヴァイさんのお店が どこにあるかはわからないけれど、とりあえずホストクラブといえば歌舞伎町だ。
一軒一軒捜せば、きっと見つかる。見つけてみせる!