第3章 もう逃げられないよ♡
金糸の髪を揺らしながら階段を登っていくロイド。遅れぬよう真白も歩き出そうとすると
サディアス
「あ、スーツケースは置いて行きなさい。茶菓子を取りに行くついでに君の部屋に置いておくから」
サディアスは真白のスーツケースに手を掛けた。
『え? でも…』
サディアス
「私も君と立場は変わらない。気を遣わなくていいよ。」
『ーーサディアスさん』
緑髪をオールバックにした彼は背丈によらず小顔で、その顔立ちはキリッとしている。
そんな顔立ちを崩して笑うサディアスに見つめられれば、真白は頷くことしか出来なかった。
『すみません、ありがとうございます。』
サディアス
「いや、それを言うのはこちらの方だ。」
(君が来たお陰で、今日から渇ききった喉を潤すことが出来るからね。)
サディアスはおもむろに真白の手を取り、そこに口をつける。
少し曲がった姿勢でもワックスをつけた前髪は後ろにかきあげたとしても毛一本も乱れない。
フォーマルな髪型だ。
『 さ、サディアス…さん?』
あまりに可憐な容姿、仕草に、真白は動揺してしまうが
ロイド
「あれ〜二人とも何しんての? 早く行くよ」
『っあ! ロイドさん!』
いつまでもこうしてのんびりとしている訳にはいかない。
二階の柵から顔を覗かせるロイドは不満げに頬を膨らませては一階にいる真白とサディアスを見る。
そんなロイドに、真白は自分のするべきことに気づき、サディアスの手から自身の手を離し、階段に向いた。
『す、すみません! 先に行きます!』
サディアス
「ああ、引き止めてしまってすまないね。」
浴衣の裾から真っ白な手を出し、サディアスは真白の背を見ながら手を振る。
しかし、
(少し口をつけただけでこの味わい。ふっ、主はとんでもない小娘を見つけて来たな。)
自身の唇に手を当て、これからの戯れに胸を高鳴らせた。