obsidian is gently shines
第13章 恋人宣言
勢いよく立ち上がった親友の彼女とは対照的に、セチアは食べかけのパンを見つめたまま、その身を固くする。
まるで椅子に縫い付けられてしまったかのように。
「どうしたの?
え~、もしかして勿体ぶってる?」
「………」
「いいよ、セチア。
相手になんてしないでいいから、
ほら、早く準備しに行こ?」
「………ぃ」
「え?なにか言った?
聞こえないんだけど?」
「してないの。どっちからも」
「!!」
「セチ…」
いつだったか、同じ質問をしたことを思い出す。
そして今と同じように
『してないの、どっちからも』
と教えてくれた。
だがそう言ったセチアの表情が曇ることはなくて。
それどころかふわりと微笑み
『普通じゃないでしょ?でもね、それでもいいんだ。それが私達の形なんだって思ってるから』
それはそれは、とても幸せそうに。
「え、うそ!嘘でしょ?
告白されてないなんて!
しかも貴女からもしてないの?」
食堂内、余すことなく響くほどの大袈裟な声量。
お陰でその場にいる全員の視線は、もれなく三人に注がれてしまう。
(セチアが言い返さないからって…)
親友だからと、教えてくれたことが他にもある。
リヴァイが見えている以上に、モテること。
その事に、本当は、とても不安に思う瞬間があること。
だからこそ、普通に。
感情を荒げることは簡単だが、そうすればきっとリヴァイに迷惑を掛けてしまうから。
『それに、誰かを好きになるって悪いことじゃないでしょ?』
(セチアってば優しすぎだよ)
「それって、付き合ってるとは言わないわよ?
でも良かった~!
だとしたら私にもチャンスあるんだもん。
ううん、もう決まったも同然!うん!」
明るい未来しか想像していないのだろう。
目を輝かせては、言いたい放題。
「そんなの、貴女には関係ないでしょ?!
二人の邪魔しないで!!!」
「落ち着いて、私なら大丈夫だから」