obsidian is gently shines
第12章 trust that follows
そんな二人だから、疑うことなく話して聞かせた。
「優しいおねえちゃんと、
優しいおにいちゃん。
…だから、お話しました。
お二人なら笑ったりしないでしょう?
誰かに言いふらしたりもしない」
『そう信じてますから』
それは心からの、信頼。
親から子へと伝えられた、二人へのゆるぎない信頼。
「あ、あ~…その、何ていうか、ウン」
「……恥ずかしい、ですね…」
「そうだね…」
耳だけでなく、頬まで赤くする二人。
そこへさらに赤味を足すのは、傾きかけた太陽の優しい橙色。
「…そろそろ失礼しますね。
紅茶、ありがとうございました」
「いえいえ。
お口にあったかな?」
「はい、とっても。
お誘いありがとうございました。
ハンジ分隊長」
「よかったらまた何時でも来てね。
あ、ハンカチは気にしないで」
「そんな…洗ってお返しします」
件のハンカチは、今モブリットの手の中。
そしてそれを、ひょい、とハンジがつまみ上げる様にして自身の手に収める。
「そうだね、悪いけどそうしてくれる?
はい、これ」
「間違いなくお預かりしました。
では…、失礼します」
控えめに床を鳴らす靴音と、数度振り返っては小さく手を振る彼女を部屋の前で見送る。
扉を閉めて振り返れば、
「ハンカチを、どうして…」
モブリットは独り言のように、ハンジの背中へと問いかけた。
「だってそうすれば、あの子はまたここに来る」
もしかしたら、ではなく、必ず。
「会いたいだろう?セチアに」
「…はい」
またいろいろな話を聞かせてほしい。
その時、もし困ったことがあれば、遠慮なく頼ってほしい。
勿論それ以外でも。
君と、その家族の信頼にこたえるために。
君が教えられたという、その真っ直ぐな信頼にこたえるために。
Fin