obsidian is gently shines
第12章 trust that follows
「…、…あの…」
「あぁ、ごめん。いっぺんに言い過ぎたね。
それじゃ、順を追って一つずつ」
「分隊長、いい加減にしてください!
どうしてそんな事を聞くんですか?!」
「まずは、そうだな…
許可をとってるかどうか」
必死に止めようとするモブリットに構わず、
ハンジはセチアから視線を逸らさない。
すぅ、はぁ、と控えめに深呼吸をすると、
「許可はとっていません」
セチアははっきりと言い切った。
「ふ~ん…。じゃ次ね。
普段の"団長"の様子は君もよく知ってるよね。ほんと、すごいギャップだ」
「はい、とても驚きました」
「うんうん、私も驚いたよ。
まさかあのエルヴィンが……って。
で、どうなの?恥ずかしくなかった?」
「はい。恥ずかしくありませんでした」
またも言い切る。
その表情は真剣そのもの。
「そっか…。成程ね…」
「どう声を掛けていいか、
どうやったら起きてくれるか…
そこだけは困ってしまいましたけど」
でも丁度ママが帰ってきてくれたので、バトンタッチしちゃいました。
そう、くすりと笑えば、その目元を長い睫毛の影が縁どる。
「…そうか……」
「分隊長……」
何かが違う。
さっきまでのあの笑顔。
まるで、試すような…
いやもしかしたら、叱責するのでは?
決して厳しくはないが、断罪、するのではないか?
兎に角、何かあれば力づくでハンジを止める。
そう思いモブリットは構えていた。
がしかし、今はない。
目の前の笑顔から感じるのは、じわじわと溢れ出してくる好奇心。
ハンジが昔持ち得ていた、巨人へのそれに似ている気がする。
そして珍しく彼自身もそれに引っ張られるように、セチアの話しをもっと聞きたいと、そう思うようになっていた。