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obsidian is gently shines

第11章 スミス家の日常



『?!』

驚きに、セチアの両肩が大きく跳ねる。

エルヴィンはといえばまだまだ目覚める雰囲気は訪れず、そのせいかナナバへの愛情表現も収まる気配が、無い。

『ん…、ちゅ、…ナナバ…
 ちゅっ、ちゅっ、ちゅぅ…』

(はばばばばばば!!!!!ちょ、ちょっと、パパ!何してるの~~~!!!)







『ただいまー』

『!(ママ帰ってきた!)』

部屋を飛び出し、転がるように階段を降りていく。

『ママっ!!!』

『ん?慌てちゃって、どうかした?』

『お帰り!お願い、パパ起こして!』

『あらら、やっぱり起きなかったか』

『やっぱりって…私じゃ無理って知ってたの?』

『いや、ごめん。そういう意味じゃないんだ。ただ、手強いだろうなって』

『手強い…すっごく手強い!!!ママじゃなきゃ無理!』

『ふふ。それじゃちょっといってくるから、これキッチンにお願い』

抱えていた紙袋をセチアに手渡し、背を向けたナナバが呟く。

『ちゅぅ、してあげたの?』

『は!?』

『くす…今度試してみたらいいよ』

ただし、それだけじゃすまないけどね。
と意味深な一言を残し、悠々と階段を上がっていく、すらりと伸びた長い脚。





『えーっと今見たのは…イヤイヤ、気にしちゃだめだ。平和な証拠、だよね?ウン』

受け取った紙袋からは、オレンジの香りが絶えず漂っている。

(そうだ、ママの紅茶も用意しなくちゃ)

くるりと回れ右をすれば、見えるキッチンからは淹れたての紅茶の香りがほのかに漂ってくる。

(ふう……。オレンジも紅茶もいい匂い)

今朝はずっと、驚き通し。
エルヴィンに、そしてナナバに。

が、それでいて、嬉しいような、安心したような、そんな気もしていて。





『…うん。お天気もいいし、今日も平和!』




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