obsidian is gently shines
第11章 スミス家の日常
セチアの話しではこうだ。
ナナバかセチアが最初に起き、
二番手はもう一人が。
エルヴィンは三人のうちで一番最後。
これはセチアが物心ついた頃から、もうずっと続いていること。
いや、続いているというよりも、それが普通だと思っていた。
何しろ呼吸をするかの如く、極々当たり前のことだったから。
「今日もそうでした。
ママが最初で、次に私が起きて。
紅茶の用意が出来たら、
ママがパパを起こしに行って」
「へぇ…
ナナバ、毎朝それしてるの?」
「はい。
なんとなくですが、楽しそうというか
全然嫌とかそういうのないみたいで」
「お二人とも仲がいいですから」
「そうなんですよ。
……もしかしたら、
パパ無意識に待ってるのかも」
何故なら、エルヴィンはナナバに起こされるまで絶対に起きてこない。
そんなエルヴィンに、ナナバも嫌なそぶり等は一切なく。むしろ逆で『できるだけゆっくり寝かせてあげたい』というような雰囲気をセチアは感じていた。
何しろエルヴィンが起こされるのは、早すぎず遅すぎず…それでいてゆったりと朝の時間を過ごせる絶妙なタイミング。しかもそれが毎日。ナナバのまめさが伺い知れる。
「なんか頼もしいね。いやまぁ、結婚前もそんな感じはしてたけどさ」
そしてそんな"頼れるナナバ"に一家の大黒柱が毎朝起こしてもらい、ようやく三人が揃う…というのがスミス家の日常だ。
「そういえば、パパって朝弱いみたいなんです。ママに起こされてもすぐには起きられないみたいで…部屋から出てくるの、結構時間かかるんですよ」
「それってさ、もしかしたらだけど
ナナバに甘えてるのかも?」
「そう、なんでしょうか。
でもそう言われればそうなのかな…」
「お、もしかして思い当たる節あり?」
『実は…』
と、セチアが話し出したのは
あの朝のこと。