obsidian is gently shines
第11章 スミス家の日常
「はい、ここどうぞ」
「失礼します」
「ごめん、もうちょっとだけ待ってね」
少々(と思い込むことにした)散らかっている執務室。
セチアが座っているソファーも、座る前までは座面が見えなかった。本が置いてあったり、バインダーが立て掛けてあったり。
向かいにあるソファーも、同じ。
今まさに、ハンジとモブリットがそこにある色々を片付けている。
…正確には、座れるようにするため別の場所へ一時避難させている、と表現した方がよさそうだが。
「あ、こんなとこにあったのか」
「今朝お伝えしましたよ?
…ごめんね、
お客様をもてなすような状態じゃなくて」
しかし散らかってはいるが埃っぽいことはない。要するに、一見乱雑に見えて、実のところ何もかもに手が入っている。
つまりここにあるもの全てはただあるのではなく、必要とされてここに"在る"のだ。
「そんなこと…
分隊長お忙しそうですから、
お掃除の時間を作るのも大変ですよね?」
きっとセチアが座っている場所に広げられていた走り書きのメモも、ハンジにとっては大事なものに違いない。
「あぁ~~~
そうなんだよ~~~
君ってばよく分かってくれてる~~~!」
「はぁ…仕方ないですね。
優しいセチアさんに免じて、
今日はもう追求しません」