obsidian is gently shines
第11章 スミス家の日常
(…これは、そこそこ怒ってらっしゃる)
(どうにかしないと一晩中説教、だな。ウン)
そう肌で感じ取ったハンジは、確実に話題を変えるべく
『あ~!あれだあれだ』
と大袈裟に頷きながら、セチアの顔を覗きこんでは一気に捲し立てる。
「よかったらさ、
夕飯前だけど紅茶なんてどう?
お礼にさ。いいよね?」
「珍しい茶葉が手に入ったんだよ~!
たまには私とお茶も悪くないだろ?
だろ?」
「え、でも…」
「分隊長、鼻息荒いですよ」
かるく本を抱え直すと、モブリットは執務机目指して真っ直ぐに歩を進める。
「だってさ~
普段あんまり接点なくてさ~」
ハンジは振り返るとモブリットの背中を目で追いながら、『私だって可愛いセチアちゃんとお喋りしたいんだよ~』と訴える。
「確かに、あまり接点はありませんが…」
「だろう?!
リヴァイばっかりずるいと思うだろ?!」
「それは思いません。
っと、ここでいいですか?いいですね?
貴重なものばかりですから、
取り扱いは丁寧に!お願いします」
「了解~!
で、どう?どう?
お茶、していかない!?!」
がっしと肩を掴まれ、気付けば既に一歩部屋へと引き入れらている。
「あの、これから調べ物されるんですよね?
お邪魔になりませんか?」
「大丈夫だよ」
「そうそう、
彼だって君と話がしたいんだ。
だよね?モブリット」
「それは否定しません。それにね君とお茶を頂くより、自分で散らかした物に蹴躓く方がよっっっぽど時間を無駄にするから」
『だから、君は気にしないでいいんだよ』
と、モブリットの柔らかな声に
『あはははは』
と、ハンジの乾いた笑い声が重なった。