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obsidian is gently shines

第9章 好きになったのは:黒色編



つんつん

『!!』



(本当に柔らかいな。焼きたてのパンみたいだ)



つんつん

『ぁ、う!』

『おや…嬉しいってさ。もしかしてリヴァイのこと、気に入った?』

『ぅっ!』

『………』



(気に入る?俺を?…何でだ?)


訳がわからない。
だが、嫌われてはいない。

ならば…


『セチア』

『ぁ、い!』

リヴァイに名を呼ばれた瞬間、セチアの顔が笑顔でほころぶ。


『これは…。リヴァイ、君はいいお父さんになるよ。間違いない』

『どうだかな……』





ばれないように。
声の抑揚は極力抑えて。

(……笑った…んだよな)


セチアが笑った、嬉しい。
自分が名前を呼んだら笑った、嬉しい。

思わず抱き締めそうになった。
つられて笑いそうになった。

(そんな、らしくないだろ)

だから、ばれないように。

セチアを抱く左腕に、他より少しだけ意識を集中させてみる。
赤ん坊独特の高い体温が心地いい。

触れる指先で、ちょっとだけおくるみを撫でてみる。
甘い、砂糖入りのホットミルクのような香りが、そこらからふわりと広がった気がした。



(小さくて、柔らかくて、軽くて)

(可愛いな、セチア)


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