obsidian is gently shines
第8章 start line
「で、ですね。ナナバお姉様?」
「ん?」
「お姉様の"馴れ初め"もお伺いしたいのですが」
「はは、これはこれは…またどうして?」
「だって、私ばっかりってフェアじゃないし!」
それに、とセチアは目尻を染める。
「パパとママいつも仲いいから、
その、参考に……」
『っ!』
カツン、と耳慣れない高い音。
脱衣所から聞こえたそれは、何か固いものと固いものがぶつかった時の音で…
「エルヴィン?」
「パパ、大丈夫?」
そろってひょこりと顔を覗かせるナナバとセチア。
二人の視線の先には、タオルを肩にかけ洗面台を覗き込むエルヴィンの姿が。
「すまない、驚かせたね。
ちょっとカップを落としてしまって」
『大丈夫かな』『割れてない…よかった』と左手に歯ブラシを持ち、右手では拾ったカップを高く掲げ、くるくるといろいろな方から見ている。
「…紅茶いれたけどどうする?」
「いただくよ。
始める前でよかったな」
「じゃ、セチア先に入っちゃって」
「ん」
エルヴィンと入れ違いに、丁度紅茶を飲みきったセチアが脱衣所へ。
暫くすれば、気持ち良さそうな鼻歌が聞こえてくる。