obsidian is gently shines
第7章 好きになったのは:空色編
『♪』
整理整頓が隅々まで行き届いた執務室。
その様とは反対に、部屋の中央に設えられた応接用のテーブルの上には、まるで撒き散らすように置かれた沢山の画用紙と色とりどりのクレヨン。
『戻ったぞ。…チッ、またこんなに散らかしやがって』
『おかえりなさい!みて!パパとママ!』
舌打ちしながらも、別段怒った様子はない。もうこれは単なる癖だろう。
その証拠にセチアも気にするそぶりなどなく、今しがた完成した"努力の結晶"を高々と掲げて見せる。
『ほう…。よく描けてるな』
『えへへ』
極上の座り心地のソファー。
埋もれないようにと、靴を脱ぎ膝立ちのセチアの隣に腰を下ろしながら、リヴァイの手は無意識にだが迷うことなくその色を目指す。
『……セチア』
『なに~?』
『二人のことは、好きか?』
『ふたり?』
『エルヴィンとナナバだ』
真っ白い画用紙の中、辛うじて人とわかるその二人。
黒のクレヨンで笑顔が、そして黄色のクレヨンでお揃いの髪が描かれている。
そして、そんな二人を見つめるリヴァイの掌には、程よく減った黄色のクレヨンが一つ。
『パパとママ!だいすき!!』
『そうか』
『りばいは?』
『あ"…?』
『りばいは?パパとママすき?』
『……どう、だろうな…』
『りばい…?』
『………』
『セチのパパとママだよ?…きらい?』
『あぁ、そっちか…心配するな、ちゃんと好きだ』
『!!!』
優しく撫でる手と、ふわりふわりとゆれる淡い金色の髪。
『お前と同じだな』
『うん!』