obsidian is gently shines
第7章 好きになったのは:空色編
(今日もかっこいい…)
オフホワイトのシンプルなシャツにタイトなジーンズ。
体型は、セチアの知る限り一切変化が無い。
相変わらずのショートカットも、いくつになってもよく似合う。
そして何より、どことなく余裕を感じさせるその微笑…
「………」
「セチ?」
「あ、ごめん。
ママかっこいいなって思って」
「おや?もしかしてごまかそうとした?」
「してません!ていうか!」
二歩、大股で近付きつつ母親の襟元に手を伸ばす。
「もうちょっとボタン…」
「あぁ、ついね。ごめんごめん」
もういい年だ。
それでも、その"女性を魅了する独特の魅力"は衰えないらしい。
挙句、時折こんな風に若干の無防備さを見せたりするものだから…
(こんなんだからいつまでも『ナナバお姉様』なんて呼ばれるんだよ。しかも女の子からばっかりだし)
と、むぐむぐ口の中だけで呟きながら、一つボタンを閉じる。
「ありがと。
よし!それじゃ聞かせてくれるかな。
"馴れ初め"ってやつ」
「な!もう、しょうがないなぁ…
そんな大げさな事じゃないよ?」
あれはいつの頃だったか。
きっと、その感情を理解するにはまだ幼すぎる頃ー…