obsidian is gently shines
第7章 好きになったのは:空色編
ナチュラルな色合いで統一されたキッチン。
そこで並んで洗い物をしているのは、ナナバとセチア。
今日も今日とて仲が良い。
「パパ、お風呂入った?」
「うん。『一番はセチアか君だ』なんて言ってたから押し込んできた」
「また……。いつも仕事大変なんだから、一番はパパねって言ってるのに」
「ほんとだよ」
ふふ、とよく似た笑い声が重なる。
「セチア、これもお願い」
「はーい」
ナナバが濯いだ食器を手渡せば、セチアは丁寧に拭き上げしまっていく。
何度か繰り返し、最後の一枚。
受け取ったセチアは『これどこだったかな』と食器棚の上から下へ、ゆっくり視線を滑らせる。
…随分と家事がうまくなった。
料理はある程度のレシピを覚えた。出てくるものはきっとあの人も気に入ってくれる。何しろ紅茶にあうお菓子のレシピもあるから。
洗濯物も綺麗に畳めるようになった。勿論、洗いもばっちりだ。きっと潔癖なあの人も納得してくれる。
(誰にでも優しいし、仕事も頑張ってるし。我が子ながら良い子に育ってくれた。うん)
親馬鹿、かもしれない。
それでもそう思わずにいられない。
そんな頼もしさすら感じるその後ろ姿に、今なら…とナナバは口を開く。
「セチア」
「ん?なに?」
「セチアはいつ頃、リヴァイを好きになったの?」
「ぇ…もう、なに?突然」
「いや、ちょっと気になってね」
「うーん…」
全面に硝子の嵌め込まれた扉に思案顔を映し、セチアが振り返る。
そんな彼女を見つめるのは、シンクに軽く体重を預け、腕を組むナナバ。