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obsidian is gently shines

第6章 taciturn adviser




『これ以上喋ったら口の中がからからになる』
それだけ言い置いて、ミケは自分の執務室に戻っていった。
見慣れた背中を見送った団長室には、エルヴィンとナナバの二人きり。


「ナナバ」

「ん?なぁに?」


甘えたような、それでいて甘やかすような声。
エルヴィンだけに聞かせる、少しとろけたような声。


「…どうしたら大人になれるかな?」

「え?」

「はぁ……」

「…っ、ぷっ、はは。エルヴィン可愛い」

「か、可愛い?!
 ……むぅ、何故だ……」

「大丈夫、そんなエルヴィンがいいんだよ」

椅子に座ったままのエルヴィンを抱き締め、ナナバは擽るように囁く。


「ふふ。ね、エルヴィン。
 優しい人がもう一人いるんだ。
 誰だか分かる?」

「……、…ミケかな?」

今度はエルヴィンの番。
立ったままのナナバの腰に腕をまわし、ぎゅっと抱き寄せる。


「うーん、確かにミケも優しいね。
 でも、残念。もっと近くにいる人」

「誰だろう、さっぱりだ」

「エルヴィン」

「ん…?」

「エルヴィンだよ。
 私たちのこと、心配してくれたんでしょ?」


ミケの言った通り、きっと全て分かっていたに違いない。
分かっていて、気付いていて…駄目だと、許可できないと、"エルヴィンの判断"でそう答えた。
セチアとリヴァイにがっかりされるのも、ナナバに手間を掛けさせないのも、全て自分の責とするために。


「エルヴィンありがとう」

「ん…」

「でも次は…みんなで考えようね」

ナナバの胸にこすり付ける様にして、エルヴィンが小さく頷く。


「素直でいい子。そんな子にはご褒美をあげちゃおうかな。お夕飯は何がいい?デザートもセットにしちゃうよ?」



「   」



エルヴィンの呟いた一言に、ナナバの顔はあっという間に真っ赤になるのだった。





Fin




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