obsidian is gently shines
第1章 お幾つになりましたか?
(ったく)
(何度言えば飽きるんだ、コイツは)
はぁ……と、止めようのないため息がまた出てしまった。
何しろ無意識の産物だ、致し方あるまい。
「…お前と同じ、人間だ」
「でもスッゴク若い!」
「若くねえよ。
一般的な成人男性ってやつだ」
「成人男性のふりした魔法使い!」
「んな訳あるか…バカが…」
そしてこれまた同じように、無意識に口が動く。
今までに何回バカと言っただろうか?
相当数口にしているはずだが、残念ながら数えてなどいない。
何しろ勝手に口が動き、勝手のうちにこぼれ落ちてしまうのだから。
だが、
何度睨まれようとも、
何度バカと言われようとも、
リヴァイをよく知る彼女は引くことをしない。
「ほんと、若いし強いしかっこいいし…」
「何処にでもいるおっさんだ」
「そんな事ない!
ぜ~ったい!な!い!」
「チッ」
「ほら、この間だって…
『俺も歳をとったな』とか言ってたけど、
ほんと、全然だよ?」
「今日だってね、此処に来るまでにいろんな人がリヴァイを振り返ってたじゃない。気付いてたでしょ?」
引かない。
何度睨まれたとしても
何度バカと言われたとしても
それはリヴァイの本心ではない事を、セチアは知っているから。