obsidian is gently shines
第5章 DNH企画:明日も晴れるのおまじない
(あの時ママがいいって言ってくれたから…ママに感謝しないと)
ふいと廊下の窓に目をやれば、相変わらず遠慮なく窓を叩き続けるのは土気色した雨粒。
(まだ暫く降りそう…)
「! そういえば」
「どうした」
「ううん、またちょっと思い出したの。雨だからかな」
『 雨降りの時は 過去に思いを馳せる時 』
いつ、どこで覚えた言葉だろう。
本だったか、新聞の読者投稿の類だったか、それとも誰かとの会話だったか…
そう記憶を手繰り寄せようとすれば、これもまた思い出したことの一つかと、思わず笑ってしまう。
「リヴァイ、覚えてる?」
あの日、リヴァイに乞われ自分の名前を書いたこと。
今日と同じ雨降りの日だったこと。
「いつだったか、名前書いたでしょ私。
あれ、なんだったの?」
「あれ…?」
リヴァイもまた、名前というヒントと共に記憶を手繰り寄せる。
「随分とおままごとに付き合ったからな。
いつ頃、どんな時の話しだ?」
「晴れのおまじないって言ってたけど」
「ああ、あれか。
おまじない…まぁ御守りみたいなもんか。
毎日晴れるようにな」
「でも今日雨だよね。今までだって…
ってことは効果なし…?」
「いや」
晴れ。
毎日、晴れ。
例えどんなに天気が悪くても…
「晴れだ」
「そうなの?」
雨は変わらず降り続いている。