obsidian is gently shines
第5章 DNH企画:明日も晴れるのおまじない
『駄目だ。許可など出来るわけがない』
『エルヴィン…』
団長室にて。
現れた二人に厳しい表情で相対するのは、調査兵団団長を務めるエルヴィン・スミス。
そしてその隣には、団長の第一補佐官兼ミケ班副長という肩書きのナナバ。
『まったく…用もないのにやってきて何を言うのかと思えば…。セチア、今回は君が賢明だ』
『はい』
『リヴァイ、どうした?君らしくないぞ』
『恋人なんだ、少しくらい構わないだろ』
『なっ?!』
『あー…リヴァイ、その言い方は』
『だめダメ駄目!ぜーったいダメ!!!』
大人げない大人、とはまさに今のエルヴィンをいうのだろう。
『ちょ、ちょっと、パパ?』
リヴァイの一言にぷりぷりと怒りだし、座る椅子ごとくるりと背を向けてしまった。車輪などついていないのに、実に器用なものである。
そしてそんな駄々っ子エルヴィン(ナナバ命名)の姿に、セチアも思わず素の口調が出てしまうが…今の状況では仕方ない。
『あらら、またですか…。団長?もう少し話を聴いてあげてもいいのでは?』
『………』
『もう…』
変わらず背を向けるエルヴィンの正面に回り込み、ナナバはその両頬、いや両耳を優しく包む。
『…?ナナバ?』
『これでよし。リヴァイ、最初からもう一度お願い』
『四六時中これじゃ息がつまる。他にいない時は楽にしてもいいか?』
『許可します。ただ』
『…ただ?』
『この件、エルヴィンの耳には入っていません。当然許可なんて出せない。だから全部、私の独断。二人ともいい?』
『了解だ』
『ママ…』
『こら、セチア。その呼び方はだめだ。崩していい相手はリヴァイだけだよ?』
『っ、はい』
『それから、分かってるとは思うけど節度を持って。仕事中であることを忘れないように』
『あぁ、心配するな』
『うん、リヴァイは大丈夫だろうね。問題はセチア、君だよ』
すいと目尻を引くと、ナナバの纏う空気が温度を下げる。
『浮かれないように』
『はい!』
『よろしい。リヴァイに迷惑かけないようにね』