obsidian is gently shines
第5章 DNH企画:明日も晴れるのおまじない
『固い。崩せ』
『できません』
事務方として調査兵団に所属するセチア。
両親であるエルヴィンとナナバは勿論、恋人であるリヴァイも現役で所属する。
そんな労働環境だから、誰に言われたわけではないのだが、勤務中にそれ相応の振る舞いは欠かせない。
何しろいずれも年上で上官。親しい間柄であるが故、余計にそれを滲ませることはよろしくない。
『俺からの頼みでもか』
『できません』
『……』
親の七光り。
コネで就職。
往々にしてありふれた評価。
本人の努力などお構い無し。
(リヴァイだって知ってるでしょ?)
そう視線で返すも、ただただじっと見つめ返してくるだけで引いてくれそうにない。
(私だってそうしたいよ。でも…)
父は兵団のトップ、母はその補佐官。
恋人は年齢を重ねて尚、衰えを知らぬ兵士長。
そんな人達相手にプライベートのように接するなど…
万が一にもそんな場面を"よく思わぬ者"に見られたら、何と言われるか。
きっとセチア本人ではなく、エルヴィンやナナバ、そしてリヴァイが監督不行き届きと評されてしまう。
(迷惑、掛けたくない)
それは当然の結論であり、一職員としては当たり前の礼儀。
『二人きりの時だけでいい。頼む』
『できません』
『はぁ…頑固だな。だったら、許可を取れば問題ないな?』
『許可?』
『行くぞ』