obsidian is gently shines
第3章 待ちきれなくて
『リヴァイに何かプレゼントしたいんだけど、
何が良いと思う?』
一月ほど前だろうか。
そう相談された両親は、二人揃って驚いた。
何しろ初めてのことだったからだ。
父は『いいんだよ、セチア。君が元気でいることが一番だ(ずるい…ずるいぞリヴァイ!)』
母は『今度一緒に見に行ってみたら?二人で選ぶのも楽しいんじゃないかな(エルヴィン、落ち着いて)』
と、それぞれにアドバイスをした。
その結果、
『一緒に行くのは恥ずかしいから…』
というセチアの意向により、こっそりとリヴァイに探りが入れられ(セチア・エルヴィン・ナナバは勿論だが、ミケやハンジもさりげなく協力してくれたらしい)、最終的に無難にハンカチが選ばれた。
…当然、一連の事はリヴァイにバレていたのは言うまでもない。
「大事にしてくれてるんだね。
あの子喜ぶよ」
「…そうか…」
小さく呟いたリヴァイの左手が微かに動き、ハンカチを握る。
いや、握るというよりも包み込む、という表現の方がふさわしいかもしれない。
それはまるで、セチアの手を包み込むかのように。
「!」
「まって、もしかして」
「……」
人を待っている。
リヴァイはそう呟いた。
そして優しく握られた左手。
「リヴァイ…、あの子を待ってるの…?」
「…流石"母親"だな」
「いやまって、今から!?
あと何時間あると」
もうそろそろ7時になろうか。夜ではない、朝の7時だ。
待ち合わせは16時、あと9時間ある。
いくら時間に正確といっても、
セチアを待つ為といっても…
「幾らなんでも早すぎる。
一旦帰った方がいい」
「『待つのも楽しい』」
「!!」
「だったな?」
いつだったか、ナナバの口からこぼれた言葉。