obsidian is gently shines
第3章 待ちきれなくて
(朝食、かな?)
最近、リヴァイは引っ越した。
選んだのは極々小さな一軒家。
それでいて、一人で過ごすにはほんの少しだけ広い家。
だが、兵団の敷地外に居住するということは、当然自炊なり外食なりが増える。
今朝もきっとそうに違いない。
「何食べたの?」
「食べた?」
「ん?食事だよ、朝食。
ここ卵料理が美味しいらしいからね」
「あぁ…いや、これだけだ」
そう言って、つい、と飲みかけのカップの縁を人差し指でなぞる。
「こら…
ちゃんと食べないとだめだろう?」
「すっかり母親も板についたな」
「まぁね。
で、食事でないなら何をしにここへ?」
今は朝。
早朝というには日が高いが、それでもまだまだ一日の"始まり"といえる時間帯だ。
そんな時分にこんなところにいるリヴァイに、その目的に、ナナバは少しだけ興味が湧いた。
「……人を、待ってる」
テーブルの上に置かれたリヴァイの左手。
その下にはきちんと折り畳まれた濃緑色のハンカチが、その縁をほんの少し覗かせている。
「それ…」
ナナバも見覚えのある、それ。