obsidian is gently shines
第3章 待ちきれなくて
(やっぱり来てよかった。美味しそうなオレンジが買えたよ)
抱えた未晒の紙袋から一つ取出し、その鮮やかな色に目を細める。
と、まるで地平線から顔を出した太陽のような曲線の向こう、ぼんやりとしたシルエットにナナバの視線は吸い寄せられた。
「…リヴァイ?」
背筋を伸ばし、ピントをあわせる。
(間違いない)
朝陽をはじく艶やかな黒。
まるで彫刻のように整った顔立ち。
道行く人はその完璧なまでの佇まいに一瞬、目を奪われる。
ただ、テーブルについているだけなのに。
(目立ってるね…。本人に自覚はないだろうけど)
そして近付けば近付くほど、その人影は間違いなくリヴァイその人だった。
「おはよう」
「あぁ…」
それだけ短く挨拶をしたリヴァイは、ナナバが声をかける前と同じく、朝独特のひんやりとした、それでいて活気と熱をはらんだ空気が満ちる市場へと視線を戻す。