• テキストサイズ

obsidian is gently shines

第3章 待ちきれなくて



(やっぱり来てよかった。美味しそうなオレンジが買えたよ)

抱えた未晒の紙袋から一つ取出し、その鮮やかな色に目を細める。

と、まるで地平線から顔を出した太陽のような曲線の向こう、ぼんやりとしたシルエットにナナバの視線は吸い寄せられた。


「…リヴァイ?」


背筋を伸ばし、ピントをあわせる。

(間違いない)

朝陽をはじく艶やかな黒。
まるで彫刻のように整った顔立ち。
道行く人はその完璧なまでの佇まいに一瞬、目を奪われる。

ただ、テーブルについているだけなのに。

(目立ってるね…。本人に自覚はないだろうけど)

そして近付けば近付くほど、その人影は間違いなくリヴァイその人だった。


「おはよう」

「あぁ…」


それだけ短く挨拶をしたリヴァイは、ナナバが声をかける前と同じく、朝独特のひんやりとした、それでいて活気と熱をはらんだ空気が満ちる市場へと視線を戻す。

/ 81ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp