obsidian is gently shines
第3章 待ちきれなくて
チュン チュン
ピチチチチ
「うぅん…、…あさぁ……」
トン
「…、…ん…」
っとン
「…ぅん……、ん…」
ト、ン
不規則に階段を降りてくる足音と、むにむにと何事かを呟く声。
毎朝の恒例。
今日も、至極平和な証。
「おはよう、セチア」
「ママ…おはよう…」
寝起きの姿そのまま、いささか派手についた寝癖も気にすることなく、セチアが小さく欠伸をしながらリビングに入ってきた。
「おやおや、今日も見事だ」
「う、ん~…」
「それにしても随分と早いけど、
待ち合わせは午後じゃなかった?」
休みなんだし、まだ寝ててもいいんだよ。
ナナバはそう言いながらセチアを促すと、一緒にソファーに座る。
「うん…?」
決して朝が苦手というわけではないが、まだまだ眠気は抜けないのだろう。
彼女の両の瞼は、ほぼほぼとじられたまま。
「待ち合わせは何時?」
「まちあわせぇ…?」
(あらら、まだ駄目か…よし)
こしこしと瞼を擦っている顔を覗き込み、
ナナバはすこしだけゆったりとした口調を意識する。