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obsidian is gently shines

第2章 sweet souvenir



「…っ、はぁ、…はぁ……」

足音が遠ざかるのにあわせ徐々に呼吸が整ってくる。

そして、絶妙なタイミングでエルヴィンの目の前、桃のタルトの横にグラスが置かれた。


「すまない、ありがとう。…ナナバ」

「ん?」


ナナバは小さく切った桃を口に運ぶ。
噛む度に、口に広がる優しい甘さ。
ゆっくりと飲み込めば、それは体中にも広がっていく。


「私からあの子を遠ざけたね?」

「…ごめん。きっと責任の事、セチアに聞くと思って。だってエルヴィン、気付いてるでしょ?」

「そうでなければ、
 今頃あの子はここにいるな」

ナナバは小さく頷く。


「ナナバ…
 俺はまだそこまでは許していない」

「分かってる。
 でも二人を信じてあげたい。
 そうも思ってるはずだよ」


だからこそ、ずっと考えていたに違いない。
愛娘からの土産にすら手を付けずに。


「ナナバ、俺は…」

どうすればあの子が幸せになれるのか。
自分には…何ができるのか。


「はい、あーん」

「ん……甘い…」

「美味しいね」

「あぁ」

「大丈夫。だと思うよ」

「…あぁ」



そう、大丈夫。

リヴァイとセチアの未来は、こんな風に甘く、優しいに違いない。

エルヴィンとナナバの今がそうであるように。

よく似ていると、誰からも言われる親子だから。
よく似た時間を、きっと過ごしていくだろう。

それぞれに二人、そっと寄り添いながら。







(それにしても"責任"とは…すごいお土産を持たせてくれたね、リヴァイ)

ナナバの頬が自然と緩む。



「…そのうち挨拶にくる、のかなぁ…」

「ほっぁっあ!?!」

「ぷっ。
 ちょっと驚きすぎだよ、パパ」

「だっ、誰のパパと、言っているのかな?」

「ふふ、誰だろうね?」





Fin




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