第1章 〜Encounter〜
ーーーーーーーーーー
「エルヴィン入るよ!」
執務室に戻り書類を片していると、荒々しくドアを開けたハンジがズケズケと近付いて来る。
「こんな遅くにどうした。」
「どうしたじゃないよ!さっきの子!あんな子、うちには居なかったよね?」
一番目撃されたく無かった人物に見られ、溜息を吐く。
おそらく自部屋に入れた所も見ているだろう。
「あぁ…。衣服も身に纏っていなかったから心配したが、どうやら酔っている間にここに迷い込んだらしい。」
「それって…誰かに襲われたとかじゃ無いの?」
「逃げ込んで来た可能性はあるが、先程の様子を見る限り襲われては無いだろう。今は酔いを冷ませる為に私の部屋で寝かせている。」
「それなら良いけど…私はてっきり…エルヴィンの彼女かと思ったよ。」
面白くない、と顔を歪ませるハンジを無視して書類に目を落とす。
「それにしても綺麗な子だったねぇ。兵団に入んないかなぁ〜?」
ハンジの言う通り確かにあの子は容姿端麗だった。あの場所で出会ったのが俺じゃなければおそらく、誰かに襲われていただろう。
とは言っても俺も危なかった。今は壁外調査前で身体の関係を求めて来る兵士も少なくは無い。
だが、あの子は兵士では無い。
今までは出来るだけ流してきたが、普通の一般市民や密偵かもしれないと頭にありつつ、手を出しそうになったのだ。
「本人次第だが…執務程度なら使えるだろうな。兵士にするにはかなりの労力と時間が要る。」
「華奢だったもんねぇ。全く、うちの人手不足には頭を抱えるよ。」
「人手不足な上に書類を提出しない分隊長が居ると確かに頭を抱えるな。」
「いっ、今は書類より!得体の知れない美女の正体の方が調査兵団にとって大事と思わない?」
素性の知れない者をここに置いておく訳にはいかないだろ?と言い訳して誤魔化すハンジ。
大事にはしたく無かったが、バレてしまったからには仕方がない。
幹部のみの話し合いの場を設ける。
「…明日皆を集めろ。」
「そう来なくっちゃ!!じゃあ、私はそろそろ帰るよ!!おやすみ〜!!」
ご機嫌になったハンジが手を振りながら執務室を後にする。
それを見送った後、俺はまた大量の書類に目を落とした。