第1章 〜Encounter〜
「誰だ。こんな時間にどうしてこんな場所にいる。」
「っ……!!」
低く威圧感のある声が広場に響き渡る。
下着姿などどうでも良くなるくらいの声のトーンに、この敷地に入ってしまった事を深く後悔した。
「すっ、すみません!!迷ってしまって!!」
相手の顔は暗くてよく見えないが、私の元へ近付いて来ている事が足音で分かる。
「女性か…。何故迷う必要がある?部屋はどこだ。」
「部屋…?って…えええぇぇ??!!」
松明の明かりで見えた男の顔は、まさに進撃の巨人に出てくる調査兵団団長、エルヴィン・スミスだった。
「どっ、どどどっ!!どうしてっ!!」
「……それはこちらが聞きたい。君はどうしてそんな格好なんだ…。」
頭を抱え視線をズラす目の前の男に、今の自分の格好に気付く。
「あっ…!!」
酔い過ぎにも程がある。いや、ここまで来るとこれは夢だ。
どうせ夢なのに、咄嗟に自分の下着姿を隠す。
「はぁ……。そんな格好では風邪を引く。来なさい。」
そう言い、私の肩に兵服のジャケットを掛けてくれる。
「あ、ありがとうございます…。」
足先から伝わってくる石畳の冷たさは夢だと言う事を否定したくなるほど鮮明だ。
(夢でもいいからまだ覚めないで)
どうせならエレン達にも会いたい。
考える事を放棄した私はそう願いながら、眉目秀麗なエルヴィンに着いて行く事にした。
石造りの建物の廊下を、壁に付けられた蝋燭が薄暗く照らしている。
「入りなさい。」
「は、はい……。」
夢でもやはり迫力のあるエルヴィンに従わざるを得ない。
リアリティの高さに戸惑いながら着いた部屋に入ると、やはりアニメで出てきた部屋と同じだ。
広い部屋の壁際にはズラリと本棚が並び、奥には大きな窓と勉強机の様な物がある。
ここは執務室か団長室と言ったところか。
部屋を見渡していると、角にある衣装ケースの様な棚を開けているエルヴィンに目が行く。
「これを着なさい。」
そう言い、大きめの上下の服を私に渡してくれた。
「あ、ありがとうございます…。」