第3章 〜welcome party〜
策士と言えば、もう一人居たではないか。
「アルミン…!」
思い出した私は大声をあげてしまった。
「チッ、うるせぇな。他に重要な事があるならさっさと言え。」
「アルミン…。確かエレンの審議の際、証人側に居た少年か?」
「そうです!アルミンは凄く優秀で、エルヴィン団長が考えている意図をすぐ理解出来る人物なんです!」
「あぁ、壁を大岩で塞ぐ作戦を思い付いた兵士か。今期の新兵は頼もしい限りだな。」
「はっ、こんなのが二人も居るってのか?」
優秀が故に、今回の第57回壁外調査で中央後方にエレン達が居ると推測したアルミンは、ライナーが敵だと知らずに居場所を教えてしまう事になる。
それを聞いたライナーは、アニに掴まれたように見せた際、エレンの居場所を密かに耳打ちしたのだ。
女型の巨人を巨大樹に招いた事はエルヴィンの思惑通りだったかもしれないが、もしアニがエレンの場所を知らなければもっと被害は少なかったかもしれない。
私は小声でエルヴィンとリヴァイに一部始終話し、アルミンにも今回の話を聞いてもらうように提案した。
「なるほど。詳しく説明してくれてありがとう、ナナ。」
「で、どうする気だ?エルヴィン。」
「あぁ。相手の目的がエレンを探す事だとすれば、闇雲に兵士を殺せないはずだ。まずは攻撃しない事を最優先とする。」
「陣形はそのままか?その女型をどうやって巨大樹まで運び込むつもりだ。」
「女型がエレンの居場所を知らない限り右翼側に居るとすると、右翼班には巨大樹に入り、中央まで立体起動で女型を誘き寄せてもらう。その頃には対特定目標拘束兵器も準備が整っているはずだ。」
「おいお前、敵は本当にそいつらだけなんだろうな。」
「はい。ただ、今回の結果で未来が変わってしまったら…私にも分かりません…。」
「それはその時考えるとしよう。我々は出たとこ勝負だからな。明日、各班の班長のみに詳細を伝える。もう作戦を黙り込み、敵を炙り出す必要性は無いからな。ただし敵が所属する班と、一般の兵士には黙っておこう。騒ぎにでもなって敵側の耳に入るとまずい。」