第2章 〜Encounter with puppy〜
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いきなり現れた女は、未来から来たと言った。
信用など出来る訳なかったが、俺の過去を喋り出した途端、正直驚いた。
と、同時に
俺の過去をどこまで知っているのか気になった。
知られたくもねぇし、どこの馬の骨かも分からねぇヤツに同情されたくもねぇ。
「チッ…。」
信用したくない気持ちと、信用せざるを得ない状況に気持ちが追いついていかない。
あの女を信用すれば、簡単な話全てが上手くいくのかもしれない。
誰がどこでいつ死ぬか…。”普通の人間”だったらそんな話聞きたくも認めたくもねぇだろうな。
俺は普通じゃない。
何が間違いで何が正解なのか、その全てが知りたい。
結果が分かるのなら、悪い結果に持っていかなければ良いだけの話だ。
何十通りの選択肢から選ぶより、限りなく絞られた選択肢の中から選んだ方がいいに決まっている。
そっちの方が、気持ちの後処理が楽だ。
もし誰かのせいにするなら、その時はあいつに全ての責任を負わせればいい。
はなから信用していなかった、と。
「兵長、何か考え事ですか?」
ペトラが首を傾げ聞いてくる。
「いや、何も無い…。お前らも訓練は終わりだ、明日はゆっくり休め。」
いつもなら壁外調査の内容を事細かく確認するが、陣形が変わるかもしれないと思った俺は何も言わずに解散させた。
今回エレンの地下室への試運転の為、行って帰ってくるだけだとこいつらには促した。
兵団内に敵が居るかもしれないと予測し、壁の外ならエレンを目的とした敵が動くと判断したエルヴィンの考えによって、今回は5年前壁が破られた前から生き残っている少数の人間にしか知らせず調査をする事になった。
今回集中すべき任務は、何があってもエレンを守る事だと、それだけは伝えておいた。
薄々勘付いている奴もいるだろうが、なぜ特別班の俺達が後方なのだと、いちいちそれを聞きに来る奴は1人も居なかった。
優秀な部下達に恵まれたと、つくづく思う。
それにしても気になっているのはあの女の話だ。
酒の場か歓迎会だか知らねぇが、話を聞く価値はある。信じるか信じないのかはそれから決めれば良い。
風呂に入り終わった俺は、自室に向かう足を早めた。