第2章 〜Encounter with puppy〜
リヴァイの部屋から椅子を二つ持って来てくれたエルヴィンにお礼を言う。
机に向かい合わせ椅子を並べ腰を掛けた後、私は目の前のエルヴィンに二日後の出来事を詳しく話し始めた。
二日後に現れる知性を持った女型の巨人、それが憲兵所属のアニ・レオンハートだと言う事。
その女型がエレンを探し求める最中、陣形を崩し多くの兵士を斬撃に殺す事。
巨大樹の森でリヴァイ班率いるエレンは女型に追われ、それを阻止しようと巨人化しようと決意するが、リヴァイ班を信じたエレンは巨人化する選択を止め、エルヴィンの考えている捕獲作戦の案に成功する事。
だが、急な女型の叫びにより無垢の巨人を呼び寄せ、自らを巨人の群れに食わせてしまう事。
「でも…女型の巨人は立体機動装置を装備したまま巨人化していて…。隙を見て兵士に紛れ、逃げ切ってしまいます。」
「立体機動を装備したまま巨人化する…その可能性は少なからずあると予想していたが、小規模範囲の座標の力…そんな力があるとはな…。」
エルヴィンの眉間は、怒っているのか驚いているのか、怖いくらいにシワが寄っている。
「はい…。その後、すぐに巨人化した女型に兵長以外のリヴァイ班が挑みますが…。」
「……死ぬ事になる、と。」
悟ったエルヴィンに深く、頷く。
あの時のリヴァイの悲しい表情が脳裏によぎった私は、無意識の内に涙が流れていた。
出来ればもう、あのシーンは二度と見たくない。
俯いていると、エルヴィンの大きな掌が私の頭を優しく撫でた。
「ナナ、泣かなくていい。君のして欲しいことは分かっている。」
「…え?」
「明後日までにその三人を確保すればいい、と言いたい所だが…兵士達への表向きは地下室の調査という事になっている。今回は商会の有力者達も絡んでいる。壁外調査は免れないだろう。」
「じゃあ…。」
本編通りエルヴィンは三人を泳がせ、作戦を実行すると言う事になる。
「大丈夫だ。死んでいった兵士達を、二度殺しはしない。」
机の上でグッと拳を握り締めるエルヴィンの瞳は、揺るぎない意志がある様に見えた。