第2章 〜Encounter with puppy〜
濡れた髪を拭きながら自室の扉を開けると、そこには居るはずのないエルヴィンとあの女が俺の部屋の真ん中で立ち話をしていた。
「あぁ、もう出ようと思っていた所だった。すまないリヴァイ、今日の歓迎会はここで開こうと思っていてな。」
邪魔しているよ、と呑気に微笑むエルヴィン。
「……あ?何で俺の部屋なんだ。それよりも、今ここにテメェらが居る理由を説明する方が先だ。」
女を睨みつけるとビクッと肩を揺らした後、申し訳なさそうな顔で何度も頭を下げている。
「大丈夫だよナナ。知っているかもしれないが、リヴァイはこう見えて案外優しいんだ。なぁ、リヴァイ?」
「てめぇが何か企んでいる事は見え見えだ、エルヴィン。さっさと用件を言え。」
苛立ちを抑え切れずそう言うと、真剣な表情に変わったエルヴィンが口を開いた。
「じゃあ単刀直入に言おう。リヴァイ、少しの間ナナをこの部屋に置いて欲しいんだ。」
何言ってやがる。
「……おい。笑えねぇ冗談はやめ…」
「今、この子の存在を兵団に知られる訳にはいかない。特に憲兵にはな。その為には兵士達の目の届かない場所で生活しなければならない。」
この部屋でな、と付け足すように”あの部屋”を差すエルヴィン。
よく見ると隠し部屋へと通じる棚が少し移動している。
隠し部屋があると分かったのはつい最近だ。
埃の溜まった部屋を放置するわけにもいかず、一応毎日掃除している。
最初から隠し部屋があると分かっていたら、こんな厄介事を持ち込むような部屋を自室に選ぶはずがない。
「おいおい、俺はこいつの身の安全の確保に加担するとは言ってねぇぞ。最初に言ったはずだ。地下室にでも閉じ込めておけってな。」
「あぁ、そう言えば、"希少価値"とも言ったな。」
クソみてぇな顔でニヤついてるエルヴィンに、溜息が出る。
次から次へと面倒事を押し付けやがって…めんどくせぇ。
「チッ…命令なら初めからそう言え。その代わり、ここでの歓迎会は却下だ。」
「ハハ…リヴァイは物分かりが良くて助かるよ。」