第2章 〜Encounter with puppy〜
「…兵団内に居る兵士の名前か?」
メモを見た途端大きく目を見開き、小声で確認してくるエルヴィンにコクリと頷く。
「……そうか。俺の推測は間違っていなかった様だな。」
「……でも……。」
「……でも?」
「あ…いえ…。詳細はまた…。」
単刀直入に言ったはいいが、完全に敵だと認識させてもいいのだろうか?
こちら側があちらを敵だと認識するように、あちら側もまた、こちらを敵だと認識している。
この三重の壁の中、パラディ島を日本で例えるならば、敵側のマーレ国は戦時中で言うアメリカの様な物だ。
しかもライナーはそれを思い悩んでいた様に感じた。
そのもどかしい状況を伝える事が出来ず言葉に詰まるが、情報を提供すると約束した以上、今はとにかく二日後の事をエルヴィンに上手く伝えなければならない。
「…分かった。とにかく今は最低限の話を聞く事にしよう。聞いた上で、今夜話せる内容かを見極めるよ。」
「はい。」
「だがここでは少々話しづらいな…。」
確かに…。エルヴィンの思惑だったのかもしれないが、悔いなき選択でファーランが執務室に忍ぶ事に成功していた。
幹部棟を通った時、人通りが少なかった。
あちら側に聞き耳を立てられると、それこそ一巻の終わりだ。
一度執務室の扉を開け、周囲に人が居ないかを念入りに確認したエルヴィンが小声で話し出した。
「単刀直入に言うと君は今、周囲に晒せれる存在では無い。もし君の存在が世間に知れ渡ると…民衆も騒ぎ立て、兵団に都合のいい様に扱われるのがオチだ。」
「で、ですよね。」
という事は調査兵に見られるのもまずいと言う事になる。
幹部達しか知りえない私はどこで生活して行けばいいのだろうか?
(やっぱり地下室行きかな……。)
「そこでだ。実はまだ誰にも知られていない隠し部屋がある。」
「えっ…そんなのもあるんですか?」
「あぁ。知っているかもしれないが、リヴァイはこだわりが強くてね。一番清潔な自室を…と、選んだのがその部屋だった。その部屋の事を知っているのは、俺と部屋の主だけだ。」
「えぇ?!へ、兵長の部屋?!」
そうして私は
“兵士達が知らない特別な部屋”を与えられた。