第2章 〜Encounter with puppy〜
こういう場面を察知し、受け流すのは得意な方だが、エルヴィンの様な男に言われてしまうと動揺せざるを得ない。
「そ、そうですね…!」
「はは、そうかしこまらないでくれ。俺も、君の事はナナと呼んでもいいか?」
「はっ、はい!もちろんです!」
先程の真剣な顔から穏やかな笑顔に戻ったエルヴィンに緊張が解け、ホッと胸を撫で下ろす。
笑顔で応え、少し距離が縮まった所で
話はガラリと変わった。
「早速だがナナ、明後日の壁外調査の事で聞きたい事がある。」
「はい、何ですか?」
少し声のボリュームを下げ真剣に話し出したエルヴィンに、私はソファから立ち上がり、机の元まで向かう。
「前回のトロスト区攻防戦で二体の巨人の被験体を捕まえていた事は知っているか?」
「はい、ソニーとビーンでしたよね?でも、殺されました…。」
「ああ。始末されていた。」
始末…確かにそうだ。まだ巨人の事を“人”だと知らないエルヴィンに、殺された、と言う単語は表現を間違ったかもしれない。
「え、エルヴィン…は、兵団内に敵がいると思って、明後日あの陣形を組むんですよね?」
会話の中で敬称を付けずに名前を呼んでみるが、やはり本人を目の前にするとかなり恥ずかしい。
自然に呼び捨て出来るまでは時間がかかりそうだ。
「……!!そうだ。違うのか?」
何故陣形の事を知っているのかと言わんばかりに驚いた様子だったが、直ぐに元通りになるのを見る限り、多少なりとも信用してくれている事が伺える。
「いいえ、違いません。それは誰か、と言う事ですよね?」
「ああ。単刀直入に聞きたい。」
「要らない紙とかありますか…?後で燃やしますので。」
小さく頷いたエルヴィンは引き出しから小さなメモ用紙を出すと、一枚破り私に渡してきた。
それに名前をカタカナで書き上げていく。
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アニ·レオンハート
ライナー·ブラウン
ベルトルト·フーバー
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悲しくも敵側になってしまった三人の名前。
メモ用紙を逆さまにし、エルヴィンに渡す。
ソニーとビーンを殺したのはアニとライナーだったが
私は超大型巨人、ベルトルトの名前も挙げた。