第2章 〜Encounter with puppy〜
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「訓練が終わるまでここでくつろぐといい。」
「ありがとうございます。」
話し合いが終わり皆が訓練に戻った後、エルヴィンと執務室に残った私は自分に出されていたお茶を啜る。
エレンともう少し話したかったが
今夜もまた会えると思うと自然に頬が緩んだ。
「そんなにエレンと居たかったか?」
書類を手にしたまま唐突に聞いてくるエルヴィンの目は私に向けられている。
質問の意図は分からないが、本心を伝えた。
「…確かにエレンとはいっぱい話したいですけど、出来る事なら、皆さんと居たいです。ハンジさんもミケさんも兵長も、エ、エルヴィンさんも皆大好きで、実際に会えたらいいなってずっと思ってたんで!」
「それはかなり嬉しい情報だが…。もうエルヴィンとは呼んでくれないのか?」
「っ!あ、あれは…!その…。」
透き通るブルーの瞳で真っ直ぐと見つめられた私は、自分が昨日エルヴィンを呼び捨てしてしまった事を思い出す。
後輩と進撃ネタで盛り上がる時は常に全員呼び捨てでトークしていた為、その癖が昨日見事に出てしまった。
唯一リヴァイだけは毎回“兵長”だった気がするが、全員崇拝している事に変わりはない。
ミケもハンジもエルヴィンも“さん付け”する事に少し躊躇しながら話していた私を、エルヴィンは見逃さなかった。
「実は私…みなさんを呼び捨てで呼ばさせて貰ってました…すみません。でも、実際会ってみるとやっぱり、私なんかが呼び捨て出来る方々じゃ無かったです。」
バツが悪そうな顔をしながら素直な気持ちを率直に言うと、エルヴィンは優しく微笑みながら口を開いた。
「そんな事は無いよ。俺の事はいつでも呼び捨てで呼んで貰って構わない。この関係に上司と部下の上下関係は無いからな。」
二人の時には必ず“私”の一点張りだったエルヴィンの一人称が、“俺”に変わっている事に気付く。
確かに上司と部下の関係では無い。
だからと言っていきなり呼び捨てするような間柄でも無い筈だ。
気が付くと
確認していた書類を置いたエルヴィンが、真剣な眼差しで私を見つめていた。