第6章 クロノスローン
「俺ぁ、あいつを手放す直前くらいにギャンブルにハマってな…借金たくさん作って首が回らなくなったんだわ。
だから、その時の借金チャラにする為に友夏を闇金業者の社長に売った。向こうも跡取り兼解体屋を探してたみたいだしちょうど良かったんだわ。
まぁそれが表では養子縁組っていう風になっただけだよ。
アイツ売ったおかげで6年は生きながらえたんだがここ2年くらいでまた借金増えて首が回らなくなってこの状態だ。
なぁツバクロー、金かしてくんねぇか?倍にして返してやっ」
パシィ…!
最後まで聞くに耐えず私は義兄さんを平手で叩いた。
「ふざけるな!この人間のクズめ!!あの子はあんたに何をされてもずっと耐えてきたんだよ!?それなのになんでっ…」
「じゃあお前は友夏の為に直接何かしてきたのかよ?」
私は言葉が出なくなった。
この8年、私は直接友夏の為に何かしてきた事はない。
「ほら、何もしてねぇだろ?部外者が勝手なことばかり言うな。
闇金業者の名前教えてやるよ、【クロノスローン】だ。
俺に売られたおかげでアイツは衣食住揃った裕福な生活してんだろーよ。羨ましいもんだ」
「クロノス…あの臓器売買や人身売買にまで手を染めてるって噂の金融ヴィラン組織…そんなところに跡取り兼解体屋として友夏をっ…!?」
私は、近くを通りかかったウエイターに釣りはいらないと1万を握らせて義兄さんの腕を引っ張り店を出た。
「おいおい、何だよまだ食ってんだろ?」
「今すぐ警察に突き出してやるッ!あんたは自分がしてきた事の重大さがまるで分かってないっ!」
友夏の事を思うと涙が出た。
こんなクズに捨てられないように尽くしてもその願い虚しく金融ヴィラン組織に売られて…
衣食住揃った裕福な生活…?
笑わせるな、そんな危険なところにいてあの子が幸せなわけがないっ!!
「友夏、必ず連れ戻してあげるからっ…」