第2章 俺だけを見て * 緑間真太郎
特に会話もなくただ帰路を二人で辿る。
意外と近い二人の距離に少しドキドキする。
「…一花。」
『なに?』
「高尾と何を話していた。」
『えっ?』
歩くたび触れ合う指にもどかしさを感じながら歩いていると、突然真太郎が話し出す。
「今日の自主練習の時、楽しそうに話していただろう。」
『そう、かな?』
人気のないところで立ち止まり、私を見下ろす真太郎。
「あまり簡単に触れさせるな。」
そしてふわりと抱きしめられる。
『緑間君…?』
「真太郎だ。」
『真太郎…。』
「不安になるのだよ。あまり他の男に優しい顔をするな。」
真太郎の吐息が首にかかってくすぐったい。
『相談してたの、高尾君に。』
「何をだ。」
『真太郎が全然構ってくれないって。』
素直にそう言葉にすると少しバツの悪そうな顔をして目を逸らす。
『手繋ぎたいとか、くっつきたいとか思ってるの私だけなのかもって不安になってた。』
「…すまない。」
ぎゅっと背中に回された腕の力が強められ、真太郎の胸に顔をうずめる。
「俺にとって一花は何よりも大切なものなんだ。俺だってお前と触れ合いたい。だが…、」
『…なに?』
「お前を壊さないか怖かった。もしも欲が止められなかったら…、一花を壊しかねない。」
なんだ。そんなことだったんだ。
真太郎から漏れた本音になんだか安心した私は、アハハと笑ってしまった。