第1章 俺を愛して《観音坂 独歩》
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「っ…ん゛」
「はあ、いつも叶はいい声だ…
俺の叶、俺だけの、叶…」
色っぽい、ため息をつく。
ヒプノシスマイクを持っている時の様な
ギラギラとした眼で見てくる。
この眼に弱いんだよな、私。
————トゥルルル…。
彼の電話の音だ。
変なタイミングで電話が鳴った。
ビクッと身体を強張らせ、携帯の画面を見る。
そしてすぐに電話に出るのだ。
「はい、観音坂です…はい、はい。
…ぁぁあ申し訳御座いません!
はい、いえ、そんなつもりでは…」
まただ。
彼の仕事先から掛かってきている電話で
謝っていない所なんて見たことが無い。
電話を切った彼は申し訳なさそうな
こちらを向き、口を開いた。
「…ごめん、叶。
どうしても終わらせなきゃいけない仕事があったらしい…
行ってくるから…待ってて?」
「うん、大丈夫、待ってるよ」
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