第2章 呑み込んだ言葉は渦の中《夢野 幻太郎》
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「……夢野先生、ココは」
「ホテルです」
「いや、ホテルです。じゃないです」
「ご馳走しますよ。
メインディッシュは小生です」
「……それは嘘じゃないんですね」
「まあ、嘘でも良いんですけどね」
そんな事を言ってホイホイと
ホテルに一緒に入る私も私である。
部屋に着くや否や、リモコンを操作して
ご飯を注文した。
「おやおや、そんなに空腹でしたか」
「そうですよ。
朝食べてから何も口にしてないので」
「それはそれは…よく頑張りましたね」
そう言って、頭を撫でてくる。
私は特別なのかと思ってしまう。
その反面、私以外にも
私の知っている " 夢野幻太郎 " を
知っていると思うと嫉妬で
狂いそうになってしまう。
「…そんな泣きそうな顔をして
どうしたと言うのです。
貴女らしくもない」
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