第2章 呑み込んだ言葉は渦の中《夢野 幻太郎》
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取引先との打ち合わせは
簡潔に終わらせた。
元々、贔屓にしてもらっていた所だし
打ち出し方などに特に変更も無かった。
今回も、ちゃんと売れれば良いな。
物を書くのは好きだった。
でもどんなに頑張っても売れなかった。
自分の書きたいもの、じゃないものが
売れていくのはとても不本意だった。
——売れなきゃ、もう書けない。
そう自分に言い聞かせて
今日も、明日も、もしかしたら一生
書いていかなくてはいけないかもしれない。
夢野先生を見ていると、元気になった。
他人の事なんて気にも止めず
自分の思うがままにペンを走らせる。
初めて作品を見た時にそう思ったのだ。
一目会ってみたいと思い、サイン会に
行った時、向こうも私を知っていた様で
知り合ってからご飯に行った。
そして、今じゃお互いの欲の捌け口だ。
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