第5章 あなたのためなら
“この話、誰にも言っちゃいけないの?おれだってもちろん、キャプテンだったら…こんなこと絶対に許さないと思うよ”
ベポは、リンのことが大好きだ。
それは他のクルー達も同じ。
キャプテンだって、リンのことが『好き』。
それは、クルー達とはひと味違って、
もっともっと
強くて、深くて、
誰よりもあたたかいんだって。
“じゃあ、私と約束してよ。”
リンの瞳は、夜の空を反射してきらりと輝いている。
きっと、その眼帯の下も輝いているのだろう。
澄んで、
不自然なくらいに澄んで、
向こう側の世界がすけて見えそうなほどに。
どこか、別の世界のように。
“私が出ていった後、みんなに言って欲しい。……どこへ行っても、ここでのことは忘れない。ずっと…何があっても、どこで何をしていても、あなたたちの味方なんだって。それは約束する。”
リンは、そう言って小指を差し出した。
辺りは、しんと静まり返っている。
海だけが、この船を守るように鳴りつづけていた。
その中で、
細く、長い指と
大きなしろくまの手は重なった。
リンの目が
今までに見たことないほど真っ直ぐで、
避けてはいけない気がしたから。
“変わりたい”
“守りたい”
そう言ってるように見えたから。