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花吹雪の様に。《ONE PIECE》

第5章 あなたのためなら


「おれ……約束したんだ。」
ベポは言葉をためるように口をもぐもぐと動かした。

「約束?なんのことだ。」

船内の視線が一気にベポへと集まる。

気が動転して言葉が見つからない、という感じにあわあわとしていたベポも、
やっとのことで満を持したのか、静かに口を開いた。



「まだウォーターセブンに着く前の話になるんだけど…」

船内に差し込んだ光の柱は均一で揺らがない。

その中の空気が、ベポの声で微かに揺れているだけだ。


―――――――――




時計は夜の2時をさしている。

空は清々しく透き通っていて、月の光は船内を明るく輝かせた。

その下で、2つの影が動いていた。
静かに夜の冷えた空気を揺らす、リンの声は言った。



“私とみんなはここでお別れなの。”


“どういうこと、おれたちの仲間になったんじゃないの?”
そう途切れ途切れに尋ねる。


“少しの間だったけど、嬉しかった、私。仲間になれて。”
彼女は寂しそうに笑顔を浮かべた。

笑わなければいけない、そう言っているようなぎこちない笑顔だった。


“おれたちが嫌いになったの?”

理由も言わずに、いきなり出ていくなんて。

ベポも、他のクルーも、もちろんローも
リンのことが大好きであった。
だからこそ、これからも一緒に冒険を続けたい、誰もがそう思っていた。

“ちがうの、そうじゃないの、本当は…”

勢いで開いたリンの口は、行き場を失ったように震えていた。


リンは怖かった。
言うべきことは沢山あるのに、どうしても言葉にならない。
浮かんでくるのは綺麗ごとばかりだった。

いつの間にか本心が分からなくなっていた。





“…幸せは、そんなに長く続かないってだけ。”


言葉を探し、
やっと口を開いて出てきたのは、これだけであった。






今、私は何を思ってるのだろう。
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