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花吹雪の様に。《ONE PIECE》

第5章 あなたのためなら




カチ、と時計の音が響いた。

目を開けると、
朝日が船に差し込んでいる。


椅子に座っていたら、いつの間にか寝てしまっていたようだった。

リンの姿は―――



…見えない。



自分の膝に置かれた小さなものを、朝日に透かす。
それはきらきらと光り、青い空と太陽を小さく映し出した。

昨日、リンが落とした箱に入っていたもの。


ハートの海賊団のマークが入ったブレスレットだ。


小さな箱の中には、
リンの文字が書かれた紙も入っていた。

そこには―――。





ギリ、と歯が音を立てる。


「くそ…勝手に行動しやがって…!」

立てかけてある鬼哭を掴み、甲板に飛び出す。



この紙を見て分かった。



選択を

間違えた。




「キャプテン…まだリンは戻ってないみたい…。」
外へ行くと、クルー達がこちらを振り向き、ベポが泣きそうな顔で近付いてくる。


「あいつに…戻る気はねェ。自分の意思で出ていきやがってる。…いくら待っても戻ってこねェよ。」

その瞬間、空気が静まり返る。


クルー達からの反応は全くない。


発した声は、束の間空気を震わせたあと、
部屋の空白の中に跡形もなく吸い込まれていくようだった。


どのくらい経っただろうか。

空気を切り裂くように、シャチの声が響く。

「な…何言ってんだよキャプテン…!!リンが…出ていきたくて出ていったって言うのかよ!!!」

「リンがいつ出て行きたそうにしてたって言うんだよ…!?大体、キャプテンと昨日喧嘩したから出てったんじゃねェのかよ…!!」


“そんな訳がない”

そう信じたいのが全てだった。


しかし、全てを語っているのは

彼女自身だった。




「でも……キャプテン…おれ……」

ぴりぴりとした嵐の中、
俯きながらベポは話し始めた。
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