第5章 あなたのためなら
「もうそろそろか…。」
夜は明けて、朝が来た。
それと同時に、サカズキとの約束の時も…やってきた。
“帰るとこないならこの船にいればいいじゃん!”
“おめェは今日からこの“ハートの海賊団”の一員だ。”
“……リン…どこにも行くな…。”
色んな言葉が駆け巡り、一瞬リンを引き止めた。
いつかはこうなるって、
別れる時が来るって分かっていたから
私はあの手を取らなかった。
取れなかった。
昔から、そうだったから―――。
「リン…、大丈夫か?」
エースは心配そうにリンの顔を覗いた。
「…大丈夫よ。もう…決めた。」
リンはそっと涙を呑んだ。
胸中を占めているのは寸分の揺るぎもない決意だけのはずだ。
そうでなければならない。
今さら迷うことなど……何もない。
これが、“あなたのため”になるのだ。
「これ、お前のくれたやつのように役に立つもんじゃねェけどよ、俺の大切なもんだ。お前が海軍に行っても、俺はお前の味方だぜ…!」
エースはリンの手首を優しく掴んだ。
そして、自分の手首に付けていた、赤と白のリングをリンに付けてくれた。
味方……?
驚きで口が聞けないリンに向かって、エースは太陽のように笑った。
「なんて顔してんだよ、“友達”の印だろ?」
胸がばくばくと動悸を打っている。
リンは、ぐっと唇を噛んだ。
「…ありがと」
ただ、小さく伝えた。