第5章 あなたのためなら
「ゴール・D・ロジャーって……海賊王の?」
海賊王。
世の中の人々は、アイツのことをそう呼ぶ。
時には、まるで英雄のように言われることもある。
何が“海賊王”だ。
思わず手に力が篭もった。
「…もしその“海賊王”によ、…子供がいたとしたら…どうする…?」
――落ち着け、俺。
嫌われてもいい。
怖がられてもいい。
恨まれてもいい。
リンには本当のことを言いたかった。
「海賊王に…子供?」
「そうだ。…アイツに恨みを持ってる奴らは沢山いる。もしそんな海賊王に子供が居たとしたら…いい恨み晴らしの相手になると思わねェか…?」
リンは、じっと海を睨みつけるように真剣な目付きをしていた。
やはりどこの人も同じだ。
ゴール・D・ロジャーに何か恨みでもあるのだろう。
「……この“大海賊時代”を始めた張本人、…そして数々の悪事を犯したと言われる人の子供が生きてるのだとしたら…」
―――次の言葉が、怖い。
思わず体を硬くして、リンから目を逸らす。
今となって嫌われることが怖くなった。
“愛される”ことも許されない。
でも、大切な人から“嫌われる”のも怖い。
そんな自分はどうしたらいいのだろうか。