第5章 あなたのためなら
「ウォーターセブンに着いたぞー!!」
「すげェ!でっけェ噴水!」
クルー達は口々に騒ぎながら、船を停めた。
別名、“水の都”。その名の通り、街には水が広がっている。
「町の人達はみんな水上を移動してるみてェだな…。ベポ、ログが貯まるのにはどれだけかかる。」
「アイアイ、キャプテン。えーっと……1週間だ。」
リンはクルー達を眺めながら、作ったデザートを包み、かばんに詰めた。
そして、小声でベポを呼んだ。
「ベポ。」
「あっ、リン。どうしたの?」
そのかわいいシロクマはリンに呼ばれ、くるっと振り返った。
「私ちょっと行きたい所があるから、先に街へ行ってるね。ローには……何か聞かれたら伝えといてくれる?」
初めからローにこんなことを言ったら、着いてくるに違いない。
だからリンはベポを呼んだのだ。
「アイアイ…分かった。気を付けるんだよ。攫われたり捕まったりしないように…」
「分かったわ、私なら大丈夫よ。じゃ、行ってくる!ベポ、ありがとう!!」
リンはベポに微笑み、ベポはさりげなく頬を赤く染めた。
「キャプテンが惚れるのも分かるなぁ…。早く2人がうまくいくといいのにな。」
しかし、ベポのそんな小さな願いが叶う希望は、もうすでに壊れかけていた。